抜けた鬼鍾馗 第五回

抜けた鬼鍾馗 第5回 森 雅裕

 夕食のための食材を買い込んで帰宅すると、左絵門は改造したヘッドルーペのライトを試していた。

「明るすぎない?」

 心春はそうはいったが、まったく見向きせずに父の傍らを通り過ぎる。左絵門は出来映えに満足しているのか、上機嫌で応えた。

「照度は調整できるようにした。年とると明るくしなきゃ見えねぇから将来に備えてる」

「将来には、自作しなくてももっと優秀なヘッドルーペが売られてると思うけど」

「そんな他力本願という言葉は俺の辞書にはない」

「へええ。実体顕微鏡をくれるって人もいるけど、それじゃいらないね」

 金工の中には手元を拡大するために双眼実体顕微鏡を使う者もいる。ヘッドルーペなど比較にならない数十万の高額機器だが、他界した金工の遺品整理で心春に形見分けの話がある。心春は何度か試させてもらったことがあるが、靴の上から足を掻くような感覚で、馴染めなかった。慣れの問題ではあるだろうが、彼女にはぜひとも欲しいものではない。

「いや。俺は人の好意は素直に受けることにしている」

 左絵門がそういった時には、心春はその場にいない。持ち帰った食材を台所に置き、自室へ入った。

 棚の奥から子供の頃の荷物を引っ張り出した。忘れていたタイムカプセルともいうべき、長いこと眠っていたリングノートだ。表紙にペタペタと幼女趣味のシールが貼られている。幼稚園の年長さんの頃、母から渡された交換ノートだった。小学校に入っても続けた。高学年になると書き込みが減っているが、母が亡くなるまで続けている。

 表紙を開くと中の一枚目だけは透明なビニール製のポケットになっていて、カードなど収納できる。年月を経て破れたポケットは粘着テープで何度も補修されていた。そこに入っているのは銀の薄い彫金板だ。母親が入れておいてくれたものである。

 現代的なローラーで均一に伸ばしたものではなく、きれいな四角形でもなく、叩いて整形した板なのだが、古いものらしく細かい傷も多い。破れた箇所は裏から薄い銀板をあてて蝋付けされている。ここに九尾の狐がいた。裏からの打ち出しと片切彫りと毛彫りの技を駆使し、父の左衛門が彫刻したものだと聞いている。

 スイレンかガザニアのような長い花びらが重なる中に獣の姿がある。幼い頃は花に囲まれた犬かと深く考えもせずに漠然と思っていたが、花びらに見えるのは尻尾で、流麗にデザインされた九尾の狐だ。この狐は口を開けている。動物を彫る際には口を閉じている方が簡単である。しかし、それでは迫力も表情も出ない。この彫刻の印象が口の大きな狐が喧嘩に強いという通説と結びついていた。

 隅にはドクロと肋骨が小さく毛彫りされており、旧字の「寿」の文字を肋骨に見立てているのは結構なセンスだが、これが何を意味するのかはわからない。作者の変わり銘かとも思えるが、左絵門の銘ではない。

 全体がくすんだ彫金板だが、その底には輝きが潜んでいる。純銀は経年変色するので、銀製品には混ぜ物や加工が施されたものもあるが、黒ずんでいるのは純銀ということだ。純銀とはいっても、純金に比べれば価値ははるかに低い。金が雌、銀が雄だとすれば、これは雄の妖狐ということになる。

 ノートの文面を見ると、文中のあちこちに人や動物やハートマークを描き交えながら、幼い文字が無秩序に並んでいる。

「あのね、こはるはなっとーたべないんじゃないんだよ。おなかいっぱいでたべられないのよ。むりにたべなさいといわないでね」

 五歳の心春が全文字ひらがなで弁明している。今は特に好き嫌いもない心春だが、幼い頃は納豆が苦手だった。

「すきなものばかりたべるからおなかいっぱいになるのです。どれもおなじようにたべてね」

 母もひらがなで応じている。

 小学校に入ると、漢字が出現し、成長するにつれて、勉強や人間関係の悩みが綴られるようになる。連続して書き込む日もあれば、何か月も間隔があくこともある。母はそれらにいちいち返事を書いていた。

 ノートは母と二人だけの秘密のツールだ。だが……ふと疑問が湧いた。兄弟姉妹が何人もいたなら、一人一人と母が向き合うために交換ノートは大切なアイテムだったかも知れない。だが、心春は一人っ子である。このようなコミュニケーションの取り方が必要だっただろうか。

 夕刻から心春は餃子作りを始めた。母が作る餃子のタネは豚肉、野菜というノーマルなものから納豆、チーズ、ツナ、明太子、エビ、キムチ、梅干しなどの変化球まで多種多様だった。冷蔵庫にある食材の一掃セールだともいえる。

 そこまで多彩なラインナップではなくても、色々工夫できる餃子作りは心春も好きだ。黙々と作業を続ける。ショウガはおろして入れると風味が強くなりすぎるので刻んで入れる。母のやり方だ。

 具材を皮に包んでいると、左絵門が通りかかり、調理台を横目で見て、いった。

「お前、子供の頃はひきわり納豆あまり好きじゃなかったよな」

「かーちゃんは小さな子供にはひきわり納豆が食べやすいかと思ったみたいだけどね。今は丸大豆なら食べるようになった。でも、餃子に入れるには丸大豆は大きい」

「お前が餃子作るのは母親を思い出してる時」

「食材対戦よろしく」

「こんなに大量に作ったことにも気づかず、どんな考えごとしてるんだ?」

 調理台を見れば、百個以上が整然と並んでいる。

「はああ……」

 吐息とともに心春は時計を見やった。下準備からどれだけ時間をかけたことか。

「交換ノート覚えてる?」

「ええと……そういや、かーちゃんとお前、そんなことやってたかな。中身は知らんが」

「一人っ子なのに、なんで交換ノート?」

「文字を覚えたばかりの年長さんは手紙を書きたがるもんだ。お前とかーちゃんの場合はそれが交換ノートだったのよ」

「彫金板に九尾の狐を彫ったのはとーちゃんでしょ」

「うーん」

「忘れたの?」

「昔の仕事は忘れるのが精神衛生のためだ」

「仕事じゃないよ。交換ノートにはさみこまれてるんだよ」

「それは俺が彫ったというより修復したといった方が正確かな。古くて傷だらけの彫金板で、もとからあった彫刻はつぶれてたから」

「初めて聞いた」

「戦時中の金属供出で隣組の組長がうちから色々と強奪していった中に混じっていたらしい。金工の家だから目をつけられていたんだ。それで曽祖父さんが取り返してきたのよ。やくざの親分とも親しかった人だから、隣組も拒否できなかったんだろう。だけど、傷だらけにされていた。貴金属も色々あったから、隣組の組長がつぶして着服しようとしたんじゃないか。そのまま何十年もうちに置いてあったのをかーちゃんが引っ張り出してきて、俺に修復させた。裏から打ち出して、彫刻も補足した」

「じゃあ、ドクロに肋骨の変わり銘は……」

「もともとの彫刻の作者だ。肋骨が寿の旧字になってたろ。察するに奈良利寿の銘ではあるまいか。貴重なものだからこそ、供出から取り返してきたのよ」

「九尾の狐はもとからの画題だったということか。なんで九尾の狐を彫ったんだろう?」

「江戸の名人が考えることなんか、知らんよ」

「それをなんでかーちゃんは交換ノートにはさんでたんだろう。私はただのデコレーションくらいに思ってたけど」

「お守りにしたいんだといってたような気がするな。そのつもりで心をこめて、金と銀の板に九尾の狐を彫り直してくれ、と」

「金と銀?」

「金工の家だから金や銀の素材がそこらに転がっていてもおかしくはないが、あの古くて汚れた板にこそ意味があったんだよ」

「いやいや。金の板ってどういうこと? 銀板だけじゃないの?」

「金と銀の二枚だったと思うが、俺の記憶をアテにするな」

「金は? 金はどこにあるの?」

「あの頃からすると、金の値段は何倍にもなってるから、地金としてもひと財産だよなあ」

「金銭の問題じゃなくて、誰が持ってるのかが気になるのよ。もしかして、もう一冊、ノートがあるってこと?」

「あれっ。そういうことになるのかな」

 複数の子供とのコミュニケーション・ツールとしてならば、交換ノートは理解できる。

「私に姉妹はいない。でも、親戚はいるよね、たぶん」

「俺の方はいないが、母方はどうかな。金工としての奈良派は一大勢力で、江戸期を通して派生した流派も多い。血がつながる分家もあった。しかし、現代でもそうした家系が続いているのかどうか、俺はしがない婿養子だから知らん。かーちゃんは知っていたかも」

奈良派が続いた何百年の間には分家支流もあるし、血流が絶えて養子が継ぐこともあっただろうが、現在の奈良本家とは交流が絶えている。奈良家に親類縁者が皆無ということはなかろうが、これまた心春がすぐに思い出せるほどの交際はない。

 左絵門は親戚づきあいにまったく興味がない男で、自分の親や親戚とも関係断絶しており、子供の頃の品物は何もない。写真もないし、小中高の卒業証書すら残っていない。持っているのは大学の卒業証書のみ。極貧だった若い頃に親戚中から爪はじきされたらしい。

「どこかに私以外の奈良家の血を引く娘がいて、鬼はその子を求めているのかも」

「つかぬことを伺いますが、お嬢さん。鬼って何の話だ?」

「例の鬼鍾馗の鐔に封じ込められていた鬼が抜け出して、キンタロウに取り憑いてた。今は行方不明」

「あらま」

 左絵門は娘が素っ頓狂なことを言い出すのは慣れている。

「芸大は昔とは様変わりしたとは感じていたが、とうとうお化け屋敷になったのか。もともと魑魅魍魎が跋扈する伏魔殿ではあったが」

「奈良派には利寿という名人がいて、前妻の子が利寿の二代目を継ぎ、後妻の子が奈良本家に嫁いだ……。そうだよね」

「奈良家に伝わる伝承だが」

「本家とは別に、二代利寿の子孫が現代に至っている可能性はあるわけだ」

「仮にそれがお年頃の娘だとしてだ、しかし、その娘とお前とどこが違うんだ? 同じ利寿の末裔だぞ」

「同じじゃない。奈良利寿の前妻というのは鬼が嫁に欲しがった奈良利永の娘なんだから、その血筋とか面影を求めているのかも」

「そりゃまたロマンチックな話だ」

 心春は餃子をフライパンに並べながら、唸るように呟いた。

「金と銀……」

 心当たりはなくもない。京都では、鬼にまつわる場所を訪れた時に異変が起きた。心春一人ではなく、すみ花が一緒だった。あの娘もタダ者ではないことは察していた。もしや、あの子は……という予感はずっと前からあったのだが、追究することに積極的にはなれなかった。

「あー。もうめんどくさいっ」

 それが理由である。

 

 それから半年は大きな騒ぎも起こらずに過ぎた。だが、妙な噂は流れた。

 会津坂下町には阿倍仲麻呂神社という小さな社があるが、地元の若い無名の刀鍛冶のもとに「ナカマロ」と名乗る男が現れ、作刀を手伝ってどこへともなく消えた。それはコンクールで特賞を獲得する驚異的な出来だった。刀鍛冶は阿倍仲麻呂神社の御利益と考え、奉納するために御神剣の制作を始めたという。

 奈良県桜井市にある安倍文殊院は安倍一族の氏寺が現在地に移転したもので、安(阿)倍仲麻呂の坐像が安置され、歌碑も建てられているが、この地の刀鍛冶の家族が難病に冒された時、夢枕に「ナカマロ」が立ち、お前の娘を安倍文殊院の金閣浮御堂に参拝させよと告げた。それに従うと、一時は医者も見放した患者だったが、奇跡的に恢復した。

 一方では逆の話もある。ガタガタの鞘しか作らないくせにコンクールの審査員をつとめ、出品者に「丁寧な仕事を心がけてください」と講評する鞘師、古物商の免許も持たずに刀剣ブローカーとしての売買に精を出す刀鍛冶、普段は刀作りなどしていないのにイベントには参加してキーホルダーの銘切り実演で小遣い稼ぎする刀鍛冶、既存の鉄を材料にしているのに「自家製鋼でやっています」と看板を掲げる刀鍛冶、某国の博物館で学芸員をつとめたという触れ込みの自称日本刀スペシャリストなどが、出世や商売繁盛を祈願してこれらの社寺を訪ねても何の御利益もないという。それどころか、帰路で交通事故や泥棒被害に(ダメージは少ないが)遭ったりするらしい。

 いずれも噂の発信源は刀剣関係者であるが、父と二人でそんな情報に接して、心春はなんだかうれしくなった。

「ナカマロはなかなか筋の通った鬼のようね」

「どうかな。御利益があった連中は共通点を持っている。家族に妙齢の妹や娘がいる」

「ナカマロが嫁に欲しいと申し入れてきた?」

「そこまで些細な噂は伝わってこないが、その娘たちが結婚したという話も聞かない。地方に鬼が切望するような奈良家の血筋が伝わっているとも思えんし」

 左衛門と心春は「うーん」と同時に唸った。

「お望みの花嫁候補は見つからんかあ」

「会津や奈良に鬼が現れたのはあくまでも阿倍仲麻呂ゆかりの地だからであって、嫁探しではあるまい。しかし、鬼のナカマロ君は若い娘に甘いようだ」

「しょーもない奴……」

 筋の通った鬼だと感心したことを後悔した。

 

 こうして、しばらくは平穏な学生生活が続いた。心春は大学生でありながら遊ぶ習慣がない。出歩くよりもギターを弾いていたい。練習しながらギターを抱いて寝落ちしてしまうくらいだから、身なりに気を配ることもない。

 とはいっても、心春の学生としての本分は彫金だ。学校は集中力を切り替える場所でもある。ただ、木工・金工棟と彫刻棟が隣接する区画は工場か工事現場みたいなもので、学生も埃や火花を浴びてもかまわない格好をしているから、身なりの切り替えはないようなものだ。

 楽器演奏は膨大な反復練習の積み重ねであり、精神的な負担も少なくないのだが、彫金の作業中は頭の中が空っぽになり、雑念に悩まされることは(あまり)ない。聴覚と視覚という感性の違いかも知れない。金工棟で過ごす時間はホームに帰ったような、他では得られない安心感がある。彼女の根っ子はここにあるのだった。

 そんな場所で、心春はタガネを削っていた。タガネの基本的な種類は決まっているが、先端部分は使用者が目的に合わせた形状に削って加工する。焼きが入ったタガネはヤスリで削れない。ホルダーにタガネをセットして、円盤状の研ぎ機で削るのが教育機関では一般的らしいのだが、職人育ちの心春は研磨力の大きなベルトグラインダーで手っ取り早く削る。回転するベルトに当たるタガネの先端がどう削れているかは見えない。ホルダーなど使わず、指先の感覚でタガネがベルトに当たる角度を調整する。心春にしてみればあたりまえの工作なのだが、こうした勘が働かず、自分でタガネを作れない学生もいる。

 工作機械が並ぶ作業場を出入りしていると、異質な何かが視界の隅をよぎった。

(……?)

 見やると、才喜すみ花だ。吹きさらしのような広い間口の屋根の下へ笑顔を振りまきながら入ってきた。

「本来の専攻科目にいそしんでる心春の姿も新鮮でいいね」

「お嬢様が来るところじゃない。何してるのよ?」

「美術館に展示されてる不思議な鐔を見に来た」

 芸大美術館では予定通り「鬼神展」が開催されている。鬼が抜けた鬼鍾馗の鐔も展示され、図録には異変前の写真と異変後の写真が掲載されており、テレビの埋め草的なニュースに取り上げられたこともあって、見学者は「へええ。これかあ」と足を止めるが、会場を出ると何を見たかも忘れた足取りで「さて、何食おうか」と去っていく。そんな平穏な展示期間が続いていた。

「抜け出た鬼はナカマロと名乗っているらしいよ」

「抜け鬼」について心春が知る限りを話すと、すみ花は「ふーん」と唇を尖らせた。

「心春の奈良家は鬼と因縁がある家系なんだね。抜け出る前の鐔の写真見たけど、鬼さんの顔見たら悲しくなっちゃったよ」

「江戸時代にしては表情が面白いよね。私も人物や神仏の彫刻では顔に力を入れる。現代の顔だと批判する人もいるけど、そりゃそうだよ、私、現代人だもん」

 教室にすみ花を誘い、置いてある荷物から小さな桐箱を取り出した。

「あげる」

「えっ」

 小さなペンダントが入っている。 

「私だよね、私だよね。うれしいっ」

 銀製のペンダントトップはヴァイオリンを手にしたすみ花の姿をデフォルメした丸彫りで、裏に心春の刻印を打ち、市販のチェーンをつけている。顔の部分は五ミリにも満たないが、小さくても人物の表情を彫ることには自信がある。

「凄いなあ。心春って人間離れしてるよね。ホモ・サピエンスじゃなくホモ・モンストローズというやつかな」

「褒め言葉と受け取っとく」

「受け取れ受け取れ」

 すみ花は抱きついてきた。芸大生は個人主義が強く、仲間意識をあまり持たず、醒めている者が多いので、珍しい感情表現だが、違和感がない。これがこの娘の常人ではないところだ。

 金工棟の出入口へ向かうと、外に人影が見えた。心春とすみ花が作業場と教室の間を移動するにともない、物陰にちらちら見えていた男子学生だ。心春と目が合うと、距離があるのに笑顔で会釈した。

 怪訝な表情を作る心春に、すみ花が両手を彼の方に広げて、何者かを教えた。

「伴奏をやってくれてる天浪鈴ノ介君。美術館を一緒に見たんだけど、このあと二人で練習」

「ふうん。ピアノ科か」

 弦や管、声楽などの学生にはピアノ伴奏者が必要だ。学生各自が自分で探し、三拝九拝して頼み込むのである。

 天浪君とやらは愛想はよさそうな雰囲気だが、のんきに何やら飲んでいて、心春には近づかない。手にしているのは瓶ラムネのようだ。すれ違う女子学生がいちいち振り返るくらいで、見た目は悪くない。

「ちっ。ホモ・モンストローズには男子も寄ってきやしない」

「心春が怖いんじゃない? 心春はイケメンが嫌いで有名だし」

「別に好きでも嫌いでもないけど……」

 誰がそんな噂を流しているのかと問いかけた心春をすみ花は笑顔でさえぎり、細い身体を翻した。

「演奏試験、聴きに来て」

 美校の場合は年間のスケジュールに従って、いくつかの課題を制作し、そのつど教官たちの講評を仰ぐのだが、音校は年度末に公開の演奏試験がある。

 すみ花はスキップでもしそうな足取りで心春から離れ、金工棟につながる木工棟の前で、天浪鈴ノ介君とやらと合流した。ペンダントを見せられた天浪はにこやかに心春を振り返った。しかし、その時には心春は背を向けていて、見ていない。