抜けた鬼鍾馗 第八回

抜けた鬼鍾馗 第8回 森 雅裕

 その夜、鍾馗が心春の夢枕に立った。堂々たる体躯に官吏の赤い衣をまとっているが、髭が歩き、髭がしゃべっているような容姿で、その髭の中から圧倒的な眼光を放っていた。

「わしは西安の南、終南山からやってきた鍾馗。武徳年間(七世紀初め)、官吏にならんと志して科挙を受験したが落第し、それを恥じて宮中で自決した。だが高祖皇帝はわしを進士と認め、手厚く葬ってくれたので、その恩に報いるために後裔である玄宗の夢枕に立ち、疫鬼を追い払った。そして今、お前の夢枕へとやってきた。奈良派はわしを好んで画題にして、大衆受けするコミカルな容姿に彫ってくれた」

「コミカルって……。ほんとに鍾馗さん?」

「阿倍仲麻呂の化身である鬼を鎮めるために玄宗がわしをこの国に遣わし、天平の頃より……」

「そんなのいいから。動物園の虎は?」

「自己紹介させろ!」

「長いのよ。虎の腫瘍の治療は終わったの?」

「まあしばらくは寿命が延びるだろう」

 自己紹介を中断させられた鍾馗はつまらなさそうだ。心春はせいぜい可愛らしく両手を合わせた。

「じゃ、鬼のナカマロさんをさっさと連れ戻してよ。お願いっ」

「お前の可愛い子ぶりっこは何だか腹が立つな。やめろ。ナカマロを鐔に戻せというのか。面白味のない奴だな。奈良利寿はもっとぶっ飛んでおったぞ」

「利寿が鬼を鐔に封じ込めたんですってね。鍾馗さんも」

「利寿にそんな力があったのは、わしが取り憑いたからだ。だが、何のために封じ込めたと思うかね」

「鬼は利寿にとっては恋敵だから」

「そういう単純な理由であれば、わしまで、つきあって鐔の中に入る必要はなかろう」

「おつきあいだったんですか」

「奴をひっつかまえて、鐔に入り、利寿に封印をさせた。奴もわしも長くこの国を放浪したでな。いい加減に休ませてもらいたかった。わしが離れた利寿は神通力を失い、少々出来がいい程度の人間に戻った。とはいっても、わしの刺激を受けて、生来の才能が開花したんだが」  

「で、単純ではない理由とは何ですか」

「ん?」

「だからね、鬼さんと鍾馗さんが鐔に封じ込められた理由です」

「うん。鬼にしろわしにしろ、人に取り憑いたりするのは迷惑だろう」

「それこそ単純な理由でしょ。もっと何か……」

「あのな、長い年月の間に鬼もわしも実体を失った。誰かの身体を借りねば飯も食えぬし恋もできぬ」

「それで厄介なことになってるのが天浪鈴ノ介君です」

「そのようだな」

「身体を鬼のナカマロさんに乗っ取られたなら、彼の魂はどうなるんですか」

「長く乗っ取られていたら徐々に消失するだろうな」

「鬼さんの恋が成就したらどうなるんですか。恋愛は一時の気の迷いともいえるんだし、鬼が妖力で女を惹きつけても、あながちアンフェアともいえない気がしますけど、子宝に恵まれて幸せな家庭を作るんですか」

「それはない」

「そうなんですか」

「鬼は孤独なもの。その子もしかり。鬼が家族に恵まれたという話を聞いたことがあるか」

「あるよ。役小角に仕えた前鬼と後鬼の子孫は奈良で宿坊を営んでいて、テレビに出るくらい有名だし、酒呑童子の子孫といわれて、歴代天皇の棺を担いできた八瀬童子と呼ばれる人たちも京都に存続してる」

「それはめでたい。ふははははは」

 鍾馗はわざとらしく大袈裟に笑い、心春の視線から逃げるように顔を逸らした。

「恋愛が一時の気の迷いなら、家族愛は一生の気の迷い」

「わけわかんない」

「まだまだ修行が足りんのう」

「あっ、そうだ。せっかく会えたんだから、帽子をよく見せてください。かねてから鍾馗さんの被り物はどうなっているんだろうと疑問だったんです。巾という布を巻いているのか、烏紗帽みたいなものをかぶっているのか。朝鮮の笠子帽とも違う、垂衣付きの市女笠みたいなのをかぶっている鍾馗像もあるんですよね」

 心春は鍾馗の頭の周囲を観察し、無礼にもコンコンと叩きさえした。

「あー、あなたはお椀みたいなのをかぶって、その上から布を巻いてるんですね。左右に飛び出した触覚みたいなのは布の端っこに針金入れてますね」

「この端っこをどう曲げるかは時代によって流行があるのだ」

「なるほど」

「彫刻の参考になったか」

「ところで、なんで鍾馗さんは今になって鐔から抜け出たんですか。和歌の封印は解かれているんだからもっと早く抜けることもできたでしょ」

「鬼のナカマロが念願の花嫁候補を見つけたようだからな。才喜すみ花といったか」

「祝福するため?」

「…………」

 鍾馗は答えない。

「鍾馗の考えなどどうせろくでもないこと、とナカマロさんは天浪君の口を借りていってましたけど」

「逆に、鬼にとってろくな考えとはどんなものなのかな」

「ふーん。鍾馗さんと鬼さんには他人にわからない関係性がおありみたいですね」

 鍾馗は曖昧に笑い、

「他に尋ねたいことがあれば、いうてみよ」

 と、促した。

「天浪君から鬼のナカマロさんを引き離す方法は?」

「引き離したいか」

「すみ花が幸せなら、大きなお世話かも知れない。けど、修行が足りない私としては、天浪君の魂を尊重したい」

「つまらん常識人じゃのう。宿主の天浪本人も才喜すみ花を憎からず思っているのではないかな」

「彼の気持ちは彼自身から聞く」

「ふふん」

 鍾馗は腰に吊った剣を鞘ごとはずした。

「お前にこれを授ける。鬼を倒すための剣だ」

 質実剛健、実用本位の剣である。日本神話であれば、神が持つのは十拳剣ということになるが、せいぜい三か四拳の長さである。

「これで刺せ」

「天浪君を? そんな無茶な。鬼を退治するなら鍾馗さんの仕事でしょ」

「才喜すみ花に使わせるのだ。刺すのは鬼が愛した女に限る。それ以外の者が刺せば、ただの人殺しだ。鬼が憑依している男が死んでしまう。好きな女に刺されれば、鬼は宿主から離れる」

「そして、鐔に戻るんですか」

「知らんがな」

「何、急に関西弁……」

「あー。うむ。鬼が戻って、鐔が元通りになるかどうかはわからん」

「えっ。どゆうこと?」

「今まで、こんなことなかったからな」

「無責任」

「無責任いうな」

「そもそも、なんで私の夢枕に立つのよ。当事者であるすみ花のところに行きなさいよ」

「お前ならナカマロの妖力で理性を失うこともなかろう」

「あ、あのさあ……」

「ぐはははは」

 鍾馗は重々しく咳払いをした。

「奈良利寿はなあ、わしが憑依して名品を作ったところでうれしくはないとぬかしおった」

「当然です。……いや、なんだか話を逸らされてますよね。ええと、これは夢だから会話が噛み合わないのかな。私にも奇妙な力があるみたいですけど、これも何かが憑依しているおかげだとしたら、うれしくはないです」

「ふっ。陽の方の異常者のくせに妙な矜持を抱えておるわ」

「誰が異常者よ」

「わしの黒目に映っている人物だ」

 心春は鍾馗の大きな目玉を覗き込んだ。鏡がわりに前髪を直す。

「何をしておるのか、お前という奴は。自分自身をよく見よ」

 実際には何もないのだが、鍾馗の目の中では、心春の身体を光が包んでいる。

「何が見える?」

「銀色の光。私を包んでる」

「お前の身近に九尾の銀狐がいただろう」

「銀の彫金板なら」

「ただの彫金板ではない。吉備真備が唐から持ち帰った貴金属だ。わしが奈良利寿に託し、奴がそれに彫刻を施して、その彫金板が唐から渡ってきた九尾の狐には安住の場所となった」

「んー。安住の場所ってどういう意味なのかな」

「いずれわかる」

「鐔に鬼さん鍾馗さんがお籠もりだったように、彫金板には九尾の金狐と銀狐が棲み着いているとか……」

「いずれわかる」

「そうなんだ、やっぱり」

「それでだな、利寿の娘が嫁に入った奈良本家に病人が出てな、これは例の鬼鍾馗の鐔が本家、彫金板が利寿家に分かれているためではないかと考えられ、利寿は彫金板を本家に納めた。病魔は去り、以後、金と銀の彫金板は今の時代に伝来した」

 鍾馗は長い髭をいじりながら笑った。

「お前には何かが取り憑いているわけではない。九尾の狐の精気を吸い取りながら育っただけだ。安倍晴明が使役した式神のような格の低い鬼ならお前を恐れるだろう。技芸の面から見れば、奈良利寿の血を引いていることも才能の要因よ。心配するな。人間離れしておるが、彫金も六弦琴(ギター)もお前自身の才能だ。才喜すみ花の提琴(ヴァイオリン)の才能も同様」

「よっしゃ」

「では、わしは行くぞ。家族や友を大事にせよ、奈良家の後裔よ」

「あ。ねぇ、疑問に答えてもらってない」

 とはいったものの、疑問が何だったのかを忘れた。胸騒ぎを覚え、叫びそうになって目覚めた。動悸が速い。吐息とともに思い出した。元禄の昔、鬼と鍾馗はなぜ鐔に封じられたのか。令和の現代、封印が解かれてもすぐには鍾馗が抜け出さなかった理由。そして、鐔は元通りになるのか。

(これは夢だよね……)

 陽性症状は統合失調症の代表的な症状である。「陽性」とは「あるはずのないものが現れる」という意味で、症状としては幻覚や妄想などがある。

(夢でなきゃ困る……)

 しかし、布団から出ようとすると、枕元に違和感があった。その違和感の正体を見つけると、心春は胸元を蹴られたような衝撃を覚えた。刃長一尺ほどの古びた剣が置かれていた。

「うう、嘘だああああ」

 布団の上に倒れ、駄々をこねるようにそこら中を叩いた。

 

 その日の午後、心春とすみ花は練習のために音校三号館の練習室へ入り、楽器だけでなく互いのノートも持ち寄った。同じリングノートだが、それぞれシールや落書きでデコってあり、心春は様々な生き物、すみ花はアニメやアイドルのシールを貼っているのが個性というものか。

 表紙裏のポケットに入っている薄い彫金板は、心春が銀、すみ花が金で、図柄はどちらも九尾の狐ではあるが、姿勢や表情に多少の相違がある。これがツガイの雄と雌か。

「中を見てもいいよ」

 すみ花がいうので、

「じゃ、私のも」

 心春も自分のノートを渡した。

 すみ花は小学校に入る前から母親とその友人である奈良希望の二人にヴァイオリンを師事している。自分の子供は指導しにくいという音楽家も少なくないので、他人に委ねることは珍しくない。母親の没後は奈良希望つまり心春の母親が指導者となった。交換ノートはまだすみ花の母親が生存していた年長さんの頃から始まっている。

「あさごはんたべてはをみがいたらばいおりんのおけいこをしてください」

「あさごはんたべないからおけいこしなくていいの?」

 朝食後に歯を磨いたら練習という習慣をつけさせようとしたようだが、すみ花の朝は不規則だったらしい。

「なんでもいいからすこしでもたべなさい」

 小学校高学年になると、4/4の大人用ヴァイオリンを使うようになる。むろん、まだ高価な銘器は持つわけがないが、

「BAMのストラップありがとうございました。これでケースを落とす心配もありません」

 と、書いている。心春の母からヴァイオリンケース用の頑丈なストラップをもらったらしい。

 楽器奏者は移動の時も愛器から目を離さない。手洗いに行く時も楽器を持ち込むものだ。心春も一人旅の時は新幹線の狭いトイレには行かない。

 そして、すみ花の小学校卒業が近づく頃には奈良希望は亡くなっているので、交換ノートも終わっている。葬儀の様子が書かれているが、心春は読む気になれなかった。

「そうか。すみ花もお葬式に来ていたんだね」

「たくさん人がいたから覚えてないでしょ」

「たくさんも何も……私は公園で一日中、一輪車乗り回してたから」

「そういや、見かけた記憶ないわ。あは」

 母はすみ花にヴァイオリン教育を施した。心春は嫉妬というほどではないが、寂しさを覚えた。心春も子供の頃は1/16から3/4まで子供用の分数ヴァイオリンで遊び、弦楽器に親しんだが、本気で取り組まなかった。なので、楽器に関する注意は母親から受けたことはない。ギターを始めたのは母の死後である。

「母がお揃いのノートを私たちに持たせたのは、私たちへの愛情で、すみ花のこともただの弟子とは見てなかったと思う」

 心春はそういい、すみ花も深く頷いた。

「赤おにさんにあった……って書いてある。おかあさんは、あの人も心春もうれしそうだったとお返事してるよ」

「ああ。ゲイリー・ムーアよ。牙が生えてるんじゃないかと口元を見ちゃったのを覚えてる」

「向こうも角が生えてないかと心春の頭を撫でたりしてね」

「あっ。そういう意味だったか」

 撫でられたことを思い出した。子供の頭に触れるのはマナー違反と考える外国人もいるので、意外だったのである。

 ノートの最後の方に数小節の譜面が走り書きされている。母の筆跡で、それは二人のノートの共通点である。

「バッハのトッカータとフーガだね」

 と、すみ花。譜面は導入部と途中の一部だけだ。まるで、娘たちに「譜面なしで弾いてみろ」と誘っているように。

「そういえば、私が子供の頃、母親同士がこの曲を演奏していたのを覚えてるよ。うちの父が舞台の劇伴(演劇音楽)を担当した時、この曲をアレンジして使ったの」

 すみ花の父親も音楽家で、本業は作曲だが、様々な音楽活動を行っている。この曲は劇的に始まるので、昔から多くのホラー映画などで不安をかきたてる劇中曲として使われてきた。

 全音幅の装飾音で始まるこの曲をすみ花がヴァイオリンで音を出した。下降する平行オクターブが底づきする寸前で音を上へ戻すことを繰り返し、三小節目二拍目の長三和音でひとまず落ち着く。

 オルガン曲として知られているが、元々はヴァイオリン曲だったという説もあり、ノートに書かれた譜面は断片的なのだが、すみ花は足りない部分まで弾き進めていく。心春は練習用に小型のアンプを持ち込んでいる。スマホに外部マイクを挿し、録音しながらギターを鳴らした。

 ここから平行オクターブを駆使してトッカータらしい素早い動きに入るが、三連符の途中に二連符をはさみ、メリハリをつけている。かと思えば、次はノーブレーキで三連符の下降。到達点では減七の和音がアルペジオで鳴り響く。そして、 d-moll(ニ短調)の主和音である短三和音へとたどり着く。

 ディープ・パープルのジョン・ロードは「ハードロックはバロックから生まれた」と発言しており、こうしたバッハ調コードは彼らの「Highway Star」「Burn」にも使われて、キーボードとギターの聴かせどころなのだが、心春はバンドのライブではキーボードのパートまでギターで弾いてしまう。この場ではすみ花のヴァイオリンとの掛け合いだ。もはや譜面は見ていない。

 フーガのテーマはトッカータ冒頭で予告された全音幅のA、G、A(ラ、ソ、ラ)で始まる。終わりそうで終わらない偽終止で停止したフーガのあとにはトッカータが再出。即興的なつなぎ部分のあとは荘厳なアダージッシモ、プレストと書かれた軽快で華やかなフレーズ。音型はトッカータ冒頭やフーガのテーマ開始と同じだ。こうしたモチーフを使い切り、ヴィヴァーチェ(生き生きと)で、二人の演奏は力まかせの音符の嵐となり、終結部へと突入する。ラストに悠々と鳴り響くのは人間の耳には不安定に聴こえる短三和音である。

 すみ花の視線が心春の横顔を通り過ぎて、部屋に備え付けられたピアノへ向いている。そこに置いてあった二冊のノートに異変が起きていた。金と銀の光を放ち、その光が生き物の形に立ち上がる。長い複数の尾を引きながら浮き上がった。

「九尾の……」

 心春とすみ花が叫ぶより早く、二つの生き物のような光は窓の隙間から外へ抜け出た。心春は窓から身を乗り出して行方を追い、身を翻してドアへ突進した。

「どこへ行った? 追うよっ!」

 すみ花を促して廊下へ飛び出し、壁にぶつかりながら階段を駆け降りた。外では何人かの学生が空を見上げている。

「今の、何だあ?」

 そういいながら、西南の方角を指した。美校の方へ飛び去ったようだが、もう見えなかった。

 しかし、遠くへは行くまい。彫金板が九尾の狐には安住の場所だと夢枕に立った鍾馗がいっていた。

「昔、私たちの母親同士がバッハを合奏したといってたよね。その場に金と銀の彫金板があったとしたら……つまりさ、奈良家ゆかりの彫金板だから、二人の娘たちに分けようかという話になっていたら、その時も九尾の狐が出現したかも知れない。でも、落語の『抜け雀』みたいに戻ってくるよ」

 すみ花が首をかしげた。

「私が金で、心春が銀と分けられた理由は何かな」

 心春はすみ花をジッと見つめた。自分と彼女を見比べれば答はわかる。

「金は雌、銀は雄。どんな子に育って欲しいかという母親たちの願いがこめられていたのかも」

 もちろん地金の値段は桁違いだが、奈良希望は経済観念が薄い母親だった。おそらくはすみ花の母親も。そもそも売り物ではないのだから金額は二の次だ。

 楽器は練習室に残していたので、一旦、戻らねばならなかった。学生証をリーダーにかざして認証されなければ玄関ドアは開かないが、学生証も練習室に置いてあるので、通りすがりの誰かが出入りするのに便乗して屋内へ入った。

「鐔から鬼と鍾馗が抜け出すわノートから金と銀の九尾の狐が抜け出すわ、このワンダーランドみたいな学校じゃあ、出入りのセキュリティは無力というものだわね」

 練習室に残った二冊のノートの彫金板からは九尾の狐の彫刻は消えていた。ただの薄汚れた金と銀の板だ。

 演奏を録音中のまま置き去りだったスマホが、振動して着信を知らせている。岩本琴太郎だ。録音を止め、応答した。

「やっほー」

「土生さんがこっちに見えた」

「誰?」

「どぶさんだよ」

 声をひそめたのは当人が近くにいるということか。

「お前が校内にいるなら会いたいそうだ」

「あいにくだけど、校内におりません。バンドの打ち合わせで、ただ今、遠い遠い練馬の方に……」

「嘘つけ。練習室で芸大らしからぬエレキサウンドが鳴り響いてるという情報が入っている」

「あらま」

「ヴァイオリンの子も一緒なら、連れて来い。才喜さんだったかな」

 それも土生のリクエストらしい。彼は京都のライブハウスで心春だけでなくすみ花も見ている。興味を持ったようだ。

「おそらくお前らが探し求めているものがこちらにあると思うが」

「ほおお。行く。お待ちあれ」